石田先輩

  私の中で石田先輩の存在が大きくなったのは新歓合宿最終日での石田先輩との対戦が終わった後だった。私は、合宿中のうらみつらみを試合にぷつけるつもりだったので試合に集中することができた。他の先輩方はとても盛り上がっていた。石田先輩が負けろ、というムードだった。結果、勝ってしまった。先輩方の応援のおかげだと感じた。
 その頃の石田先輩のイメージは、いいバイクに乗っていて、ルックスにも気をつかっている感じで結構もてているのか?といった感じだった。実際のところは、すでに女性に痛い目に合わされた後だったらしい。
 私は試合に勝って喜ぶ気持ちはもちろんあったが、それよりも 「本当にいいのか。」とビビリ出していた。試合、合宿がすべて終わり、庭で準備が進む。私はN先輩にバリカンを持たされ、すすめられた。最初はそんなことできないと思っていたし、石田先輩も怖かったのだが、すぐにそんな気持ちは吹き飛んでいた。合宿の不満やうらみはなくなっていたと思う。単に、調子に乗っていたのだろう。そして私は渡されたバリカンを石田先輩の頭に持っていく。その頭は合宿初日に床屋で刈ったばかりで、石田先輩が一年との試合で絶対に負けるはずが無いという気持ちが表れている気がした。
 私は頭をひっぱたかれた。私は刈ったのか、それとも刈らなかったのか記憶があいまいになっている。多分刈ったと思う。バリカンで一刀入れて叩かれたはずだったと思うが、刈る前に叩かれてやめたような気もする。結構痛かったことは憶えている。私は多くの先輩方にひっぱたかれてきたが、石田先輩のが一番痛かった。
 この時から、私はいろいろと石田先輩のお世話になることになった。それから、たびたびと「副将とは」ということを時には見本となって教えてくれた。まず大事なことは、副将は強くなれということ。他には、時間に対する考え方や態度、酒の席の先輩に対する口の聞き方、酔ったときの同姓に対する表現方法などは何度も見せてもらいました。これらを私が忠実に行うと、多くの場合、先輩方にひっぱたかれました。石田先輩から教わり、学んだことを私なりに伝えていこうと思います。四年間、どうもお疲れ様でした。俺もがんばるから石田先輩もがんばってください。